一次元に並んだ金ナノ粒子

2009年7月1日号のNanotechnology誌掲載

A one-dimensional network from the self-assembly of gold nanoparticles by a necklace-like polyelectrolyte template mediated by metallic ion coordination

データベース検索で、「DNA AND AFM」と入れたら出てきたので、帰りの電車で読みました。わざわざ机に向かって読むような内容ではございません。

どういう話かというと、1個だけの金ナノ粒子は「0次元」であるというわけです。すると、このナノ粒子をひも状に並べれば、それは「1次元」である、ということになります。

この論文は、金のナノ粒子をひも状(1次元)にする方法を開発した、という内容です。何のため、という突っ込みもあろうかと思いますが、ナノ粒子をただ集めればぐちゃぐちゃになってしまうはずなので、それがうまいことひも状に並ぶのなら、それは価値があるということでしょう。

やり方として、二通り提案しています。一つは、まず雲母板をP4VPという高分子(ビニルピリジンのようです)に浸して、基板表面をこの高分子でおおっておき、それをいったん硝酸銅と水で洗った後(これは電荷を与える目的)、この基板をMPA(メルカプトプロピオン酸)に結合させた金ナノ粒子の溶液につけると、なんと金ナノ粒子が基板上でひも状に並ぶというもの。

もうひとつの方法は、まずMPAに結合させた金ナノ粒子と硝酸銅溶液を混ぜておき、さらにP4VPも混ぜてしまう。要するに基板につける前に全部混ぜる。重要なのはpHで、これをうまいこと調節すると、溶液中で金ナノ粒子がひも状になる、というのです。

電荷をうまい具合に与えると、ただ集合するのではなく、1次元に並ぶ、ということのようです。

いったいこの論文のどこがDNAなんだ、ということになるんですが、基本的に関係ありません。ではなぜ検索でひっかかったかというと、確かに本文中にDNAという言葉が出てくるのです。それは、過去の研究の中で、DNAを鋳型にして、DNAに沿って金ナノ粒子を並べた事例がある、ということです。金ナノ粒子を並べる研究という分野が、ある程度あるということですね。そっちを読めばよかったかも。

さて・・・この論文を読んでいて、思わずニヤリとしたところがあります。このグループは、中国は吉林省の長春応用化学研究所の人たちです。この研究所はおいらも滞在したことがあり、夏場はクーラーいらず、●井沢なんてものじゃない快適なところです。ただ、滞在したときは冬場でして、なんとマイナス20度。コートは持って行ったんですが、「そんなんじゃだめ~~~~死ぬよ」とものすごい顔をして研究所の人が汚い防寒服を貸してくれました。

それはいいとして、この論文の中で、雲母板をどこで買ったのか、「purchased from Linhe Street Commodity Marketplace」とあります。長春の街中の市場で買った、というわけです。実験材料というのも専門業者から買うことが多いわけですが、こういうのどかなのもよいです。

Linheというのは漢字で書くと臨河ということになりますが、最近は長春にも日本人の駐在員など多く、リ臨河街で買い物しました、なんているブログがありますね。

長春便り

長春はなにしろ関東軍の司令部があったところ(建物はいまでもあります)で、日本とは縁のある街です。

  • 2009/08/25(火) 23:44:11
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