蝶の羽で光学部品

ちょっと新鮮味に欠けますが、2006年のNano Letters掲載のジョージア工科大の論文

蝶の羽で光学部品

これはどういう話かというと、生物の作る形というのはなかなか精密で、人間がまねして作りづらいものもある。蝶の羽の表面もその一つで、かなり精密なナノ構造を持っていて、それも蝶がいろいろな色をしているというのがこのナノ構造の光学特性に由来しているということ。

そこで、蝶の羽の表面を酸化アルミニウムでコーティングして、そのあとで羽を溶かしてしまうというのがこの人たちの実験。すると、羽のナノ構造を写し取った酸化アルミニウムの膜ができるというわけ。こういうのをレプリカといいますが。

ただレプリカを作っただけでもちょっとした論文は書けるとは思いますが、Nano Lettersはハイレベルな論文誌ですので、ただレプリカを作っただけでは掲載されないでしょう。

彼らの職人芸は、酸化アルミニウムの厚さを10ナノメートルずつ変えてレプリカを作り分けるというところ。蝶そのものはもともと青色。それが、10ナノメートルの厚さでレプリカを作るとなんと緑色になる、20ナノメートルだと黄色に、30ナノメートルだとオレンジに、40ナノメートルだと赤色に、と色が違うレプリカを作ったのです。

色が違うということは、光学特性が違うということなもので、厚さの違うレプリカをいろいろ作ればナノサイズの光学部品として使えるだろうというのが彼らの能書き。さらに、蝶の羽というのは、末広がりというか扇のような形をしていますので、ナノ構造には微妙に向きがあって、これを利用すると「ビームスプリッタ」という部品に使えるだろう、ということです。

蝶のほかにもいろいろやられており、蝉の羽のレプリカという研究もあります。これは某大学の授業でも取り上げるようですが…。

蝉の羽のレプリカ

手前どものほうでは、蝶や蝉ではなく、海や温泉に住む生物のレプリカをやっております。なぜ海や温泉のものを選んだかといえば・・・お仕事で万座ビーチや草津温泉に行けますから・・・今のところまだ行くチャンスがありませんが…

  • 2009/08/07(金) 01:16:27
  • This entry was posted in Research Topics. Bookmark the permalink. Follow any comments here with the RSS feed for this post. Post a comment or leave a trackback: Trackback URL.

    There are no comments yet, add one below.

    Leave a Comment