やや熱が下がったので他人さまの論文を読みました。これは毎日やっていないと落ちこぼれてしまいますね。
6月のNanotechnology誌掲載の論文
これは内容的にこちらに参考になりそうなのでピックしました。
AFM study of adsorption of protein A on a poly(dimethylsiloxane) surface
やっているのはシンガポールのNanyang大学の人たち。この大学名はおそらく中国系で南陽大学という漢字になるんじゃないでしょうか??
論文の内容は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)という樹脂の表面に、いろいろな条件でたんぱく質(使ったのはproteinA)を吸着させて、その模様を原子間力顕微鏡観察したというものです。
その結果、たんぱく質溶液のpHを変えると吸着量がかなり変化する、特に等電点付近でよく吸着する、そしてたくさん吸着するときはダマになる。それから、たんぱく質の濃度を上げていくと、ある程度までは濃度が高いほどたくさん付くが、ある程度以上になるとあまり関係ない。
どういうのでしょうか、この論文、非常に丁寧に実験がしてあり、しっかりしているのですが、この結果はまあ予想通りで、あっと驚くようなことではないですね。濃度が低いほどよく付くとかならびっくりなんですが…。
研究というのはサプライズがあるほど高い評価が得られるので、予想通りの結果だとあまり高い評価が得られず、格の高い論文誌には掲載されず、努力点みたいなもので三流誌への掲載となります。
では、このNanotechnology誌はどうなのか、というと論文誌の格付けを表すインパクトファクター(IF)が昨年は3.446となっています。IFが3.446は高いのか低いのか、というとものすごく高いとまでは言えませんが悪くはない、といったところでしょうか。
たとえばある研究所ではIFが3以上の論文をいくつ出した、という展示をしていました。個人的な感覚で言うと、修士課程の学生がIF3の論文誌に出せれば、よく頑張ったといえるのではないか、しかしIF3が最高だとプロの研究者としては生き残れない、といったところです。これはナノバイオ関連の感覚で、分野が違うと大分感じが違うと思いますが。
で、今回勉強になったのは、それほどサプライズがなくても、丁寧に実験すればNanotechnology誌に載るんだな、ということです。
ところで、なぜこの論文に着目したかというと、手前どもでもPDMSという樹脂を使っているからです。この樹脂は2液混合で、混ぜる前は液体なのですが、混合して時間をおくと固まります。そして、そんなにもろくありません。このため、いわゆる「型どり」によく使われています。型を取った後に、表面にたんぱく質をくっつけてバイオチップを作る、というような応用があるわけです。
2009/08/20(木) 01:23:54